家庭菜園の定番野菜「ダイコン」。
スーパーでは「ダイコン」としか表示されていませんが、実は品種によって味わい、育て方、向いている料理が大きく異なります。
タキイ種苗さんが1959年から2021年までに開発したのは65品種。昨年、その中から特に家庭菜園向きの5品種をナビラー(家庭菜園SNS菜園ナビユーザー)さんたちに実際に栽培していただきました。そして、今年1月には元ブリーダーをされていたタキイ種苗の広報出版部の方を交えて「ダイコン5品種比較モニター座談会」を開催しました!
栽培のコツから料理での使い分けまで、たくさんの気づきがありました。
本記事では、家庭菜園者目線でのダイコン栽培の情報や楽しいやり取りをご紹介します。これからダイコン作りを始める方はもちろん、毎年栽培している方にも新しい発見があるはずです。
【本記事のポイント】
- 家庭菜園に適した5品種の特長と使い分け
- ダイコン栽培の新しい発見と収穫のコツ
- 品種別のおすすめ料理
- プロ直伝の栽培テクニック
タキイ種苗の代表的な5品種とその特長
家庭菜園でダイコンを育てる際、品種選びは成功の重要なカギとなります。タキイ種苗のたくさんの品種から、特に家庭菜園に適した5品種をご紹介します。それぞれに個性があり、用途によって使い分けることで、より充実した家庭菜園が楽しめます。
【耐病総太り】
発売から50年を超えるロングセラー品種です。
どんな土地でも育つ強健さが特徴で、初心者でも失敗が少ないと評価が高いです。肉質はやや固めですが、漬物や切り干し大根に最適。
栽培条件が整えば糖度9度も記録する実力派で、特に宮崎の切り干し大根の主力品種として知られています。
【YRくらま】
「肉質極上の青首」と評される味わい重視の品種です。みずみずしく柔らかな食感が特徴で、煮込むととろけるような食感に変化します。
収穫は割れを防ぐため午後がおすすめ。サラダから煮物まで幅広く使える、味の良さが光る品種です。
【緑輝(りょっき)】
YRくらまの特徴を受け継ぎながら、より栽培しやすい短尺タイプとして開発されました。
浅い畑でも育てやすく、曲がりにくい特性を持ちます。葉もコンパクトで場所を取らず、家庭菜園での栽培に適しています。味わいの良さと育てやすさを両立した、バランスの取れた品種です。
【三太郎】
2010年に発表された、現代の家庭のニーズに応える新品種です。核家族化や冷蔵庫のサイズを考慮して開発され、使い勝手の良さが特徴。
株間調整でサイズをコントロールでき、辛味も控えめで料理を選びません。在圃性(畑での保存性)が高く、計画的な収穫が可能なため、家庭菜園向きの品種として高い支持を得ています。
【早太り聖護院】
京都の伝統野菜をルーツに持つ丸大根の代表品種です。
際立つ特徴は驚くほどの甘さで、実際の栽培テストでは糖度7度を記録しました。緻密な肉質は煮崩れしにくく、おでんや煮物に最適。2-2.5kgまで成長する立派な丸形は、収穫時の喜びも格別です。大きな葉を展開するため、株間は30cm程度必要ですが、伝統の味わいを楽しめる一品です。
ダイコン栽培の新しい発見が続々!
座談会で最初に驚きの声が上がったのは、収穫のタイミング。タキイ種苗広報出版部の方(以下広報さん)が教えてくださった、ダイコンの収穫は午後の方が割れにくいという事実に、参加者全員が目を丸くしました。
朝は水分を吸って膨張しているダイコンが、午後には程よく水分が抜けて収穫に適した状態になるのだとか。長年の常識が覆される方も多いかもしれません。朝収穫して割れた経験をお持ちの方は、午後収穫を試してみてください。
株間についても、みなさんの会話から発見がありました。
ある参加者さんは3条植えで程よいサイズに、別の方は30cm間隔で大きすぎる大根になったと報告。
広報さんは、品種ごとの最適な間隔を解説します。三太郎なら20〜30cm、早太り聖護院なら30cm以上。株間を狭めれば小ぶりに、広げれば大きく育つため、家族の好みに合わせて調整できるそうです。
水やりのタイミングも、参加者の常識を覆す話題に。
秋冬の大根は、発芽後のギザギザの本葉が出るまでの水やり以外は、ほとんど必要ないとのこと。夜間に地下水が上がってきて、大根が自然に必要な水分を確保できるからだそうです。
気候変動で播種時期も変化しているようです。「今年は10月があんなに暖かいの、初めて」という声に、広報さんも同意。
最近は9月がまだ暑すぎるため、9月10日から25日、場合によっては10月初旬まで播種を遅らせることをお勧めしています。
家庭菜園歴10年以上というベテランの方も驚く新情報の数々。ダイコン栽培の新常識が、和やかな雰囲気の中で次々と共有されていきました。
家庭の食卓が楽しくなる!品種別おすすめの活用法
座談会の中で、みなさんから色々な料理法も紹介されました♪
「実は大根しゃぶしゃぶが意外とイケるんです」まご×3じいじさんが試した大根しゃぶしゃぶは、肉の消費も減って健康的だとか。特に「YRくらま」の柔らかな食感が好評でした。
「早太り聖護院」は、生食で驚きの甘さを発揮。「糖度計で測ったら7度もありました」と光彩さん。煮物にすると崩れにくく、味がしみ込みやすい特徴も。
一方「三太郎」は、大根おろしから煮物まで、どんな料理にも対応できる万能選手として支持を集めました。
「緑輝」は短めで扱いやすく、特に炒め物に重宝するとの声が。あきひさんは「けんちん汁や豚汁に入れると、ちょうどいい食べごたえ」と新しい活用法を提案。
かもめ♡さんは、「耐病総太り」でぬか漬けを作りました。「たくあんみたいな感じじゃなく、生の大根で、干さずに漬けているので、パッと、サクッとした感じは、美味しかったです。」
そして、「耐病総太り」は干してもまた美味しいとのこと!
「皮を剥かずに、洗った後に葉っぱ同士を紐でくくり、雨が当たらないところで竿に吊るして、ダイコンが“しな”っと上と下がくっつくぐらいまで水が抜けると、かなり旨味が凝縮されているので、それで漬けるとまた違った味わいになる」そうです。
品種それぞれの個性を活かした料理法が次々と飛び出し、参加者のレパートリーが一気に広がった様子。
広報さんから栽培についてだけでなくたくさんのことを教えていただき、大根の新しい魅力を再発見する機会となりました。
家庭に合った品種選びのヒント
「日向、日陰、それぞれに適した品種はありますか?」ポンポン太さんから寄せられた質問がきっかけで、新たな発見も。
プランター栽培でも「耐病総太り」がよく育ったという報告に、広報さんが興味深い解説を加えます。
「葉の色が黄緑っぽい品種の方が、日陰でも育ちやすい傾向にありますね。『三太郎』のような濃い緑の葉を持つ品種は、じっくり育つ性質があるので、日当たりの良い場所向きです」
「短めの大根を探していました」と紫苑さん。二人暮らしには大きすぎる大根は持て余すとのこと。これに対し「三太郎」や「緑輝」なら、株間を20cmにして3条植えにすることで、手頃なサイズに育てられるというアドバイスも。
座談会を通じて見えてきた、家庭に合った品種選びのポイントは…(注:あくまでも今回の5品種栽培チャレンジからのおすすめです)
■家族の人数:少人数なら「三太郎」「緑輝」
■調理の好み:煮物派は「早太り聖護院」、漬物派は「耐病総太り」
■栽培環境:日陰気味なら「耐病総太り」、スペース限られてるなら「緑輝」「三太郎」
■保存方法:切り干し作りなら「耐病総太り」、生食メインなら「YRくらま」
「一つの品種にこだわらず、家族の好みや使い方に合わせて、複数の品種を少しずつ育ててみるのも面白いですよ」
広報さんの言葉に、参加者みなさんが頷いていました。
奥が深いダイコンの世界、好みの品種を見つけましょう!
今回の座談会は、発見がたくさんありました!
5品種を同時に栽培するという貴重な経験から、各品種の個性や活用法が見えてきただけでなく、家庭菜園者にとって保管のスペースや用途が限られているためダイコンの品種は大きければいいというわけでもないというのは、意外な気付きだったのではないでしょうか。核家族化が進む現代でコンパクトサイズの方が重宝するという声は、時代のニーズを反映していたように思います。
広報さんからは、午後の収穫が割れにくいという専門家ならではの知見や、株間調整による生育コントロールなど、目から鱗の情報が次々と飛び出しました。また、日陰でも育つ品種があることや、葉の色と生育特性の関係など、家庭菜園ならではの悩みに対する解決策も示していただきました。
参加者のみなさんからも、大根しゃぶしゃぶや漬物作りなど、様々な活用法が共有され、ダイコンの新しい魅力を再発見する機会となりました。品種を届ける方と、家庭で育てたい品種を選ぶみなさんが交流できる貴重な場で、ダイコン栽培の可能性が大きく広がったように感じます。
タキイ種苗広報のご担当者さん、そして熱心に栽培データを共有してくださった参加者のみなさん、本当にありがとうございました。この座談会で気づいたことが、これからの家庭菜園をより豊かなものにしてくれるかもしれません。
ぜひみなさんも、この秋から自分好みのダイコン栽培を始めてみませんか?
甘くてみずみずしい「YRくらま」、使い勝手抜群の「三太郎」、伝統の味「早太り聖護院」など、きっとあなたにぴったりの品種が見つかるはずです。
家族の好みや畑の環境に合わせて、新しい品種のダイコン栽培にチャレンジしてみましょう!
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